革心1/小説「新・人間革命」


【「聖教新聞」 2015年(平成27年) 4月28日(火)より転載】

 

【革心1)

 歴史は動く。時代は変わる。

 それを成し遂げていくのは、人間の一念であり、行動である。

 一九七八年(昭和五十三年)八月十二日、日本と中国の間で「日中平和友好条約」が調印され、今、“日中新時代”の幕が開かれようとしていた。

 九月十一日午後零時半(現地時間)、中日友好協会の招聘を受けた、山本伸一を団長とする第四次訪中団二十二人は、上海虹橋国際空港に到着した。伸一の訪中は、三年五カ月ぶりである。

 タラップに立つと、さわやかな風が〓をなでた。秋の気配を感じさせる風であった。彼方に見える、木々の深緑がまばゆかった。

 伸一がタラップを下りると、中日友好協会の孫平化秘書長らの笑顔が迎えてくれた。

 「山本先生! ようこそ! ようこそ、おいでくださいました」

 孫秘書長の差し出した手を、伸一は、ぎゅっと握り締めながら言った。

 「お招きいただき、ありがとうございます。わざわざお出迎えいただき、恐縮です」

 「私も三十分ほど前に北京から到着したばかりなんです」

 孫平化は、第一次訪中以来、誼を結ぶ、既に「老朋友」(古くからの友人)である。

 このころ、日中間の友好ムードは急速に高まり、それにともない、中日友好協会の秘書長である彼は、多忙を極めていたにちがいない。そのなかを、上海まで来てくれたのである。伸一は、その信義に応える意味からも、今回の訪中を、日中間にとって実りあるものにしていかなければならないと思った。

 訪中団一行は、中国側が用意してくれた十六台の車に分乗し、宿舎となる錦江飯店に向かった。人びとが行き交う街路を見ながら、伸一は思った。

 “あの日中国交正常化提言から、ちょうど十年か……。歴史の歯車は、大きく回り始めた。社会制度は違っても平和を願う同じ人間同士である。必ず万代の友好を築くのだ!”


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