大道54/小説「新・人間革命」

【「聖教新聞」 2015年(平成27年) 4月14日(火)より転載】

 

【大道54】

 山形県置賜地域の様子を聞いた山本伸一は、置賜で各部の中心となって奮闘しているメンバーに、次々と歌や句を詠んで贈った。

 「吹雪にも 胸はり進む 君ありて

     山形大地は 功徳と香らむ」

 「生涯の 幸を決めるは 今なりと

     笑顔を忘れず いざや戦え」

 伸一から贈られた歌は十三首にも及んだ。

 “置賜の同志よ! 悔し涙を拭い、頭を上げて、朗らかに正義の大行進を頼む!”との叫びと、祈りを込めての励ましであった。

 置賜の学会員たちは、その激励に応え、異体同心の団結をもって、決然と立ち上がった。

 新しき希望の波を起こそうと協議を重ね、八月六日に、地域文化の復興をめざし、民謡などを披露し合う、「置賜ふるさと祭典」を開催することになったのである。

 伸一も招待されていたが、来日中のアメリカのメンバーとの研修会が予定されており、東京を離れるわけにはいかなかった。代わりに、理事長や副会長らが派遣された。

 伸一は、この日、「青葉の誓い」が完成すると、置賜へ行っている東北総合長の青田進に、すぐに知らせるように頼んだ。

 昼の部の公演の終了直後、学会本部から、米沢の会場にいた青田のもとに、「青葉の誓い」完成の連絡が入ったのである。

 青田は、感涙を浮かべた。

 “先生から置賜への最高の激励だ!”

 役員たちと話し合い、祭典の夜の部では、この歌を披露しようということになった。

 だが、どうすれば、夜までに、皆が歌を覚えることができるのか――。

 中学校の音楽教師で、この祭典の合唱指導を担当している男子部の宮尾一志は、祭典会場から、米沢文化会館へ向かった。学会本部から、カセットテープに録音された歌を、電話機で流してもらい、会館にあるカセットデッキのマイクを、受話器に近づけて録音した。当時、ファクシミリは、まだ完備されていなかった。

 必死の一念が、すべてを可能にしていった。

 

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